『よう、ジュニアくんに坊ちゃん、それから皆! 元気か?』 ライアンが街を去って数日後に届いた近況報告のメール。「意外にマメだな」 変わらない様子に皆の顔が綻ぶ。 イワンだけが青褪めて新しい雇い主との写真を睨んでいた。「……お祖父さん」「じゃあ、海の向うの大富豪って……」/胃痛 *―*―*―*―* 家庭、組織、国。人は集合の元である事で己の位置を測り、安心する。「僕も例に漏れないと云う事ですね」 好敵手で、仲間でもある僕達の集合。「良いじゃないですか。お陰で人が人を大切に思う気持ちが解るんだから」 同窓も集合の一つですね、と微笑う歳下の先輩は意外に頼もしい。/集合 *―*―*―*―*「しっかし街中が蟹だらけだな。女神の祭っつうか蟹祭り?」「この街の名物です。蟹グッズに蟹料理」「あの神話からの流れで食っちゃうの?」「美味しいですよ。蟹すき、天婦、刺身、焼き蟹。大きな動く蟹看板が目印です」「……パレードに食い倒れ太郎が混じってやがる」/かに *―*―*―*―* 能力の相性が良さそうだった。息も合う。良いコンビになる自信があったんだ。 けど、それは一人じゃ無理だ。 だから置いて来たのに、なに俺を追い越してオーナー助けてんの。「ライアン!」 言われなくたって判るさ。 悔しいねぇ。頼られるのが嬉しいぜ。「俺に指図すんなっつーの」/照れ隠し *―*―*―*―* お前がいなくなった時、能力が減退した時。もう終りかなって思った時は何度かあった。 けど相棒も仲間も居て。今まで守ろうとしてきた街の奴らに支えられて、何とかやってるよ。 人生に節目はあっても最終回なんてのは無いもんさ。だから悩んで迷って、これで良いのかって自問自答しながら精一杯走り続ける。 これからもヒーローやりながら、な。/最終回
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